アーティストルームの21室目は「秋田美人」をテーマに、美術家の大谷有花さんが2016年3月1日から制作をスタート、ホテルに滞在したり通ったりしながら約1か月制作を続け、2016年3月31日に完成いたしました。
「秋田で、風土や歴史、そこに暮らす人々の気風に触れながら暮らすうちに、日本人としての自分をこれまで以上に強く意識するようになった」という大谷さん。制作したのは、秋田の杉材を随所にちりばめた、和と洋が融合したお部屋です。入り口に描かれた杉林を抜けると、正面には秋田杉でできた窓枠の向こうにハスの花が咲き誇る千秋公園(秋田市)のお堀が描かれ、襖に見立てた左側の壁には秋田を北限とする椿が、天井には陶磁器や和室の意匠に使用される氷割れ文様が秋田杉で表現されています。また、天袋に見立てた窓枠には「西馬音内(にしもない)盆踊り」の踊り手が、クローゼットの中には「秋田竿燈まつり」の提灯などが描かれている、多様な秋田の美のイメージが融合したお部屋が出来上がりました。
杉の香るアーティストルーム「秋田美人」で、日本が誇る繊細な美をお楽しみいただければ幸いです。
Room #3129 | 完成:2016.03
2013 年に制作の拠点を秋田市に移して以降、秋田の風土や歴史、そこに暮らす人々の気風に触れながら暮らすうちに、日本人としての自分をこれまで以上に強く意識するようになり、日本人の感性や美意識を凜とした花々の姿に投影する絵画シリーズ「はなすがた」の制作を開始しました。このアーティストルームは、同シリーズの作品コンセプトの延長線上にあります。この部屋には随所に秋田杉材を使用し、和の空間を演出するとともに、私が選んだ秋田を代表する美の数々を描いています。ゲストの皆さまには秋田の美とともに、日本人の繊細な感性や美意識も同時に感じ取っていただければ幸いです。
謝 辞
このアーティストルームの制作にあたり、下記の個人・団体の皆さまにご協力をいただきました。ここに謹んで御礼申しあげます。
秋田県立大学木材高度加工研究所 准教授 足立幸司 様 / 秋田県木材加工推進機構 薩摩鉄司 様 / 株式会社コシヤマ 専務取締役 腰山真司 様 / バニーコルアート株式会社 / 秋田市 / 秋田市竿燈会 / 秋田公立美術大学 (順不同)
大谷 有花
1977年 神奈川県相模原市生まれ。
2003年 多摩美術大学大学院修了。1998年頃より、自己の過去の記憶に基づくインスタレーション作品を発表。その後、作品と空間との関係を見つめる中で、空間そのものを絵画として表現する「キミドリの部屋」シリーズの制作をはじめた。2013年、秋田市に転居したことをきっかけに、日本人の感性や美意識をテーマにした絵画作品シリーズ「はなすがた」の制作を開始した。同年より、秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻 准教授。